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2009
08
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東広島マンドリンアンサンブル 第22回定期演奏会
行ってきました。
やはり驚くべきなのは、観客動員数の多さですよね。サタケメモリアルホールが8割がた埋まっている。22年間、広大マンドリンクラブを母体として地域に密着した活動をされてきた成果でしょう。客層としてはお年寄りが多い。全体を通して、大変な地元愛のメッセージがこもっています。
第2部は印象的でしたね。複数の既存ポピュラー曲を組み合わせて、簡易音楽物語とでもいうべきスタイルを実現している。鈴木静一的重厚長大曲をゴリゴリと音取りする必要もなく、みんなが知っている曲を上手い具合に組み合わせることで自由自在に所望のストーリーが構成できる。リコンフィギュラブル音楽物語の登場である。演出としても楽しい、究極のリソース有効利用。まさに枯れた技術の水平思考!大袈裟か? いやぁしかしs木くんの弟役にはたまげた。
アナウンサ「姉役は私、そして弟役は、広大マンドリンクラブのs木くんです」
s木「姉さん……」
まさかのドッキリだよ。いかにもちょうどいいの連れてきたな。
内容的には、曲のアレンジが気になりました。まず1曲目のティコティコ、続く秋桜はなかなか。特に秋桜は素晴らしかった。冒頭のギターソリは一瞬コケかけたがアレンジとしては秀逸で、素晴らしい効果を得ている。その後の1stの入れ方も絶妙で、マンドリンとセンチメンタルの相性の抜群さを改めて実感。久々にエエのォ~と唸らせられました。
が、次の枯葉は個人的にはイマイチ。ボッサのイメージが染み付いているせいか、どうしてもギターのズンチャチャチャチャという刻みが不自然で仕方ない。また、いかんせん演歌的な音階成分が耳につき、逆にシャンソン特有の半音階的フレージングが一切無い。アレンジャの手抜き感が否めません。
その次の津軽海峡冬景色はとてもよかったと思います。y 田さんのなりきり石川さゆりがとても力入っていました。出オチ10秒即退場というあっさりさも素晴らしい。アレンジに関してもオリジナルに忠実で、3連譜アクセントなど心地よい。ただ、メロディラインが聞き取りづらい部分が気になりました。
しかし問題はその次のさくら(森山直太朗)。これは高校時代に何千回と聴き、弾き、歌った曲なのでついつい評価が厳しくなりますが、微妙なところです。まず、歌モノというのは基本的に「こぶし」が含まれていてマンドリンでは表現しにくいものであり、どうしてもアレンジャの主観による節回しの省略や追加、変形が入ってしまう。特に森山直太朗は独特な歌い方をするので、アレンジの難しさは結構なものです。その中でもさくらは、サビの冒頭「さくら、さくら、今…」の部分をどう再現するかが最大の課題になる。オリジナルは図1のようになりますが、マンドリンや着メロのアレンジでは図2や図3のように処理してしまっているケースもよく見られます。すべての決め手となるのは赤く囲った部分で、多いのは図2バージョン。分かるんだけど何かしっくりこない。図3バージョンはたまにある。これは明らかに不自然です。
で、今回の演奏では図1のパターンを忠実に再現されていました。これはマンドリンで演奏する場合、スラーの表現および16分音符と直後の8分音符(さくらの“ら”の部分)の分離が難しくなりますが、ここもわりと上手く処理されていたように思います。ただ、Aメロなどでクセのある節回しがあったのが若干不自然でした。まぁそれはそんなに気になりませんでしたが。
ところが問題は裏メロのセンスの悪さ。主旋のラインをなぞりながら輪唱チックにしつつ歌詞の無い退屈さを補おうという魂胆だろうが、明らかに冗長で異物感まみれになってしまっている。そして極めつけは2番目のサビで出てきた、パッフェルベルのカノンの引用。「カノンコード」の曲に本物のカノンの旋律を織り込むなどというのは、古来より使いに使い尽された鉄板中の鉄板ネタであり、新しさのひとかけらもない。わざとらしさと欺瞞に満ちた寒過ぎる演出である。敢えて繋留音と3度の音をあまり登場させないようにしている原曲の雰囲気を丸潰してしまっている。
また、Bメロの頭(かすーみゆくー)の和音をⅡm7にリハモする意味も分からない。原曲では直前のⅠ7からⅣ→Ⅴ→Ⅰ→Ⅰ7→Ⅱ7→Ⅴ7とスムーズに遷移することでサビに向けての高揚感をモチベートしているのが良いのであって、ただ単にツーファイブ進行を作るためだけにⅣをⅡm7に置換するという意図がまったく理解できない。直前のⅠからⅡm7に移行するのは強引過ぎ、不自然さでガクッと来てしまいました。そもそもⅠ7→Ⅳの進行は、森山直太朗がギター伴奏などで特に常套フレーズを入れるこだわりの箇所であり、安易に変更するとどんどん原曲のイメージが損なわれる。
そもそも曲自体が長いのがいけない。客観的な尺を意識して適宜カットすべきです。どうしても退屈さを排してなお尺を稼ぎたいのであれば、単純に繰り返して無駄な裏メロを付け加えたり不自然にリハモしたりするよりも、原曲にある間奏のメロディなどをもっと活用すればいい。さくらの「独唱」でないオリジナルバージョンにはトランペットによる数小節の間奏があり、曲に変化を与えるにも十分適している。これを知らなかったというのはアレンジャの明らかなる勉強不足でしょう。酷評すぎか。
おっといかん!! さくらだけでこんなに書いてしまった。まぁ1部も3部も良かったですヨ☆ 管・打楽器をレギュラで使うオケはやはり迫力が違いますね。学生団体もエキストラ楽器の導入に積極的であるべきです。それでは♪
2009/08/02 (Sun.) Trackback() Comment(2) マンドリン
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先日はお越しいただきありがとうございました。
「さくら」の編曲はイケガクに注文したM藤R恵さんによるものです。
二長調である事を活かしてカノンを取り入れるのは良いと思ったんですが、2ndの伸ばしがドミナントでもないのにメロディと半音でぶつかる箇所があり、弾いてて気持ち悪さが残りました。
でも下っぱ団員としてそんな事言えなかった/(^o^)\
華燭は3楽章後半のクロマティックが上手く弾けなかったのが心残りですね。いつかリベンジしたいです。
N野 2009/08/04 (Tue.) 03:27 edit